Moretti family
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トスカーナ地方は、イタリア中部に位置し、絵画のような丘陵地帯、広がるブドウ畑、オリーブの木々が特徴的です。フィレンツェやシエナなど世界的に有名な中世文化で名だたる歴史を作ってきた都市もあり、文化と自然が融合した地域として知られています。
ワイン産地としては、サンジョヴェーゼ種を主体とした赤ワインが特に有名で、キアンティ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノなどが代表的です。これらのワインは、バランスの取れた酸味と豊かな果実味、そして長い熟成ポテンシャルを持ちます。
当主ロベルトさんは外科医です。しかし超多忙な日々を送っていた1999年、フィレンツェ近郊の小さな町スキャンディッチに農場を購入しました。
畑は長い間放置され、人の手が入っていなかったためにすぐにオーガニックでの栽培をすることができました。ずっとやりたかったというぶどう栽培を始めます。コストの問題などから認証の取得は遅くなりましたが、2003年にはビオディナミ農法に転換しました。
オーガニック歴:認証は2009年から(実践は2003年から)
ロベルトさんはオーガニックは自分たちのライフスタイルそのものだと考え、オーガニック農法を実践しています。これ以上地球を汚染をしないこと、健康的で美味しい食事をすること、そして後世によりよい世界を残したいという熱い思いを持っています。
のどかな田園地帯で働くことと、自分の手で何を作ることができるのかを考えること、特に自分のワインにある程度の結果が見いだせたときなどは、とても楽しく、満足感を覚えるというロベルトさん。自分の仕事が大好きで、現在は週に3日間は外科医として働き、残りの4日間をワイン農家として働いているというから驚きです。
外科医のロベルトさんは、ぶどうの苗は畑の枝を苗床に接ぎ木して、自分で作ってしまいます。ぶどう畑のコンクリート製の支柱が気に入らないと、木の柱に防腐塗装をして作ってしまいます。ぶどう畑除けの金網が破れてシカやイノシシに荒らされると、穴を自分で繕います。自然界に害を与えるからと、金網に電流を通すことはしません。とにかくなんでも自分で考えて実践してしまうのです。
生活はほぼ自給自足で、野菜や穀物、オリーブオイルだけでなく、親戚に育ててもらった豚を自分で解体、ベーコン、生ハム、ソーセージなども手作りしてしまいます。自然に寄り添いながらも、元々の学者肌で研究熱心、文化的な教養にも長けて日本の映画にも詳しいという一面もあり、とってもパワフルで多彩な方です。毎日働きづめでいつ休んでいるの?とスタッフが質問すると、「ここでの生活はすべてわくわく、バカンスは不要」とのこと。
マヴィと同様にロベルトさんも2012年に制定されたEUのオーガニック認証により、大規模で工業的な造りをするワインを許容するように規制が緩和されてたことで起こりうるオーガニックワインの未来を危惧しています。
「新しい規定では、ぶどう栽培に関しては以前とさほど変化がなかったものの、ワインの醸造に関してはそれまでのオーガニック農家が実践してきたことに比べるとだいぶ緩くなっています。ワインの中に多くの化学物質を入れることや積極的な化学処理を行なうことを認めてしまいました。これでは慣行的に作られたワインとまるで変わりません」そう考えるロベルトさんは自分の信念を貫くことに決めました。
・白ぶどう:マルヴァジア ビアンカ、ヴェルメンティーノ、トレッビアーノ
・黒ぶどう:サンジョヴェーゼ、カナイオーロ、マルヴァジア ネーラ、プニテッロ、
ロベルトさんの農場の標高は80~160m。全体で12ヘクタールある敷地のうち、ぶどう畑は現在約4ヘクタールで、1ヘクタールは新しいぶどう畑にするため現在工事中です。他には約1,000本のオリーブの木が植わっていたり、小さな茂みがあったりと自然豊か。
冬期の気温はごくたまに0℃を下回ることもありますが、大体が0~10℃ぐらいで、夏期は20~35℃ほど。土壌は 40%が粘土質、35%がローム層、25%砂利になっています。
土着品種を生かした世界で唯一のワインを目指す
ロベルトさんは、数年前からサンジョヴェーゼ、カナイオーロ、プニテッロ、マルヴァジア ネラ、フォリアトンダ、ヴェルメンティーノ、マルヴァジア ビアンカ、トレッビアーノといった土着品種のみを使ったワイン造りに取り組み、醸造についても、ほとんどの場合、品種ごと単一で仕込んでいます。
これにはロベルトさんの熱い思いがあり、
「イタリアは数千もの異なる品種が存在しており、それはイタリアの長い歴史から来ています。過去にイタリアは多くの小国家に分かれていて、それぞれが、他とは異なる独自の方針や決まりを持っていました。そのため、ぶどうの栽培手法にも、場所によって違いが生じ、結果多くの土着品種が生まれ、引き継がれていくことになりました。イタリアでは各都市にそれぞれ独自のぶどう品種があると言っていいくらいなのです。それならば、私たちのワインを世界で一つしかない存在にしてくれる、この貴重な品種を生かさない手はありません!生産者が商業的な側面のみを重要視したことで、廃れてしまった土着品種。今、消滅の危機に瀕しているこのぶどうたちを、私達は救いたいと思うのです。」
と語っています。
ロベルトさんはワイン造りの際には一切の化学製品を使わず、天然酵母で醸造し、なるべく人的な介入を最小限に抑えています。濾過や清澄も行わず、二酸化硫黄(SO2)も使用していません。(2009年のキャンティリゼルヴァには少量使用しています)
品質が高く、健康的なワインを造るために重要なのは、ぶどうやカーヴを清潔で良い状態に保つことで、ロベルトさんはそこに一番気を配りながらワインを見守っています。
ロベルトさんにとって「理想のワイン」として決まった形は存在しません。なぜならば、どんな違った形の表現になっていようとも、それが良いワインであれば、その全てを評価し、愛し、自分にとっての理想のワインとするからです。 ロベルトさんの目指すワインとは、ナチュラルで、品質が高く、健康的で、テロワールを表現し、地元のぶどうで造られた、独特のものです。言い換えれば、他のどのワインも持たない特別な性質をもったワインが、自分のワインのあるべき姿だと考えています。
私は日本に行ったことはありませんが、歴史、伝統、宗教に関してよく読み、皆さんの国がとても素晴らしいということを学びました。何年も前に日本語を勉強しようと試みました。ひらがなやカタカナは比較的簡単に書けたのですが、漢字に挑戦したときに、とても難しいと感じました。
日本語は、ほとんどの言葉が母音で終わり、そして一つ一つの音もはっきりと発音されるなど、我々の言語と共通していることがあります。トスカーナ人の私にとってはそれほど難しいとは感じませんでした。残念ながら勉強した日本語についてはほとんど覚えていませんが、文化についてはいくつか覚えています。私が抱いた日本の印象が実際のものか、そうでないかはわかりませんが、日本を自分の目で見ることについてとても興味を抱いており、近々来日したいと思っています。
もう一点、私は日本料理が素晴らしいと思っているのですが、ヨーロッパでしか食べたことがありません。日本で食べる日本料理はさらに素晴らしいのだと思うと、実際に味わってみるのが本当に楽しみです。もし私が皆さんを楽しませるワイン、日本の食卓を飾るワインを造れたのならば、それはこれ以上ない光栄です。「ありがとう」 (最後の挨拶は、原文もローマ字ではなく日本語で書かれていました)。