ワイン産地特集「ポルトガル編」
ポルトガルワインについて
南ヨーロッパのイベリア半島に位置するポルトガル。ポルトガルは東側はスペインのメセタ(高原大地)に隣接し、西側は太平洋に面しています。
そのためポルトガルは主に海岸部の平地と、険しい山間部に分かれ、地域によっては景色や気候、食文化まで大きく変わってきます。
ポルトガルといえば日本との交易の歴史も古く、日本に初めて伝わった赤ワインも実はポルトガル産だったといわれています。
しかし、現在ではフランスやイタリアなどの有名なワイン産地に比べ、欧州の中ではあまり目立たず、ポルトガルワインは未だにミステリアスな存在でもあります。
甘口のポートワインのほか、ドウロの濃い赤ワイン、近年では早飲みのヴィーニョヴェルデといったワインも注目され始めました。
ポルトガルワインのポイント
1.大航海時代の立役者ポルトガルはスペインと共に大航海時代の先陣を切り、その後の航海や貿易によってワインや食文化も影響を受けていきます。
2.ポルトガルのワイン産地海岸部の平地と、険しい山間部に分かれるポルトガルでは様々なタイプのワインが造られています。
3.甘口ポートワインポルトガルには世界三大酒精強化ワインのうちの「ポートワイン(ポルト)」と「マディラワイン」があります。
1.大航海時代の立役者
15世紀にエンリケ航海王子らが大航海時代を花開かせてからは、ポルトガルはポルト港を中心として海外との貿易が栄えました。
イギリスへの長い航海に耐えうるために酒精強化されたポルトやマディラが生まれ、また貿易を通じてポルトガルの食文化やワインも各地へ広がっていきました。
日本に初めてワインが伝わったのも、この時期のポルトガルワインだったといわれています。
2.ポルトガルのワイン産地
海岸部の平地と、険しい山間部に分かれるポルトガルは、造られるワインのタイプも様々です。
ポルトガル北西部にあるヴィーニョ・ヴェルデ地方は海洋性の穏やかな気候です。この地方で造られ、近年注目を集めるヴィーニョ・ヴェルデは、直訳すると「緑のワイン」。完熟していない若いぶどうを使用した、爽やかな味わいが特徴のワインです。
ドウロなどがある山間部は、急勾配で平地との大きな高低差がある、険しい地域になります。雨が少なく非常に乾燥しており、ぶどうは水を求めて地中深くまで根を張ります。この乾燥した気候と昼夜の激しい寒暖差によって、山間部のぶどうは非常に凝縮した力強い仕上がりになります。
ワイン用のぶどう栽培に適した気候のドウロでは、3世紀頃からワインの生産が始まっていました。
3.甘口ポートワイン
ポルト港を中心に海外との貿易が栄えたポルトガルでは、長い航海に耐え、船上での気付け薬としても用いられるポルトワインが広まっていきます。18世紀になると海洋を支配していたイギリスへワインの大量輸出が始まりました。長い航海に耐えるために、ブランデーを添加する酒精強化の製法が確立していきます。
そしてスペインのシェリーと並び、ポルトガルには世界三大酒精強化ワインのうちの2つ「ポート(ポルト)」と「マディラ」が誕生します。
1730年代にはポルトワインの砂糖添加の偽装事件が発覚し、以降製造管理が強化されるとともに、1756年には世界で初めてワインの原産地管理も設定されました。
現在ポルトワインを手掛ける小規模生産者は少なく、栽培したぶどうを大手メーカーに販売する生産者がほとんどです。
マヴィの生産者ピントゥイクルスさんも、醸造所が小さくワインの大量生産はできないため、選りすぐりのぶどうでワインを仕込んだ後の残りのぶどうは大手メーカーに卸しています。
マヴィのポルトガルワイン生産者
ピントゥ イ クルス家/ポルトガル ドウロ
カザウ ドス ジョルドス
ピントゥ イ クルス家の「カザウ ドスジョルドス」は創業1870年という老舗です。1994年にポルトガル政府がオーガニック転換に対する補助金を設けたのをきっかけにオーガニック転換し、その後国内外のコンクールで40に及ぶ賞を獲得している実力生産者です。
畑の傾斜は何と15~35度という驚愕の急斜面でぶどうを栽培しているので当然機会は使わず、収穫も手摘み。地元の農家ですら「ここでオーガニックは不可能」と言い切るこれらの条件の中で、ピントゥ イ クルスさんが素晴らしいオーガニックワインを造ることができるのは、コインブラ大学で農学・醸造学を学んだ農業エンジニアであるという彼の経験と知識の賜物です。
全てのぶどうがオーガニックですが、自家醸造に使うのは最上の質の果実のみです。その量は何と全体のたった20%だけ。 残りは大手ワインメーカーに売っているそうです。
主に世界3大酒精強化(フォーティファイド)ワインの1つ、ポルトガルのドウロが産地のポルト(ポート)を作っていますが、この土地ならではの赤ワイン「ドウロ」も人気です。
最高ランクの畑の最良の果実で作れる傑作をぜひ一度お試しください。
ポルトガルワインと楽しむグルメ
ポルトガルの海岸部では、海でとれた新鮮な魚介類をシンプルな味つけで豪快に楽しむことが多く、魚介を鍋で蒸したカタプラーナや、またいわしの炭火焼きなどが有名です。
そしてなんと言ってもポルトガル料理を語る上で欠かせないのはバカリャウというタラの塩漬け。冷凍技術の発展以前、ポルトガルをはじめとするスペイン語圏では、海でとれたタラを塩漬けにして乾燥させたこのバカリャウが発展しました。ポルトガルではどのレストランにいってもバカリャウを使ったメニューがあり、そのレシピは1年の365日分、あるいは1000個以上も存在するといわれています。
その他にも、肉や魚を野菜とシンプルに合わせたお料理が多く、ポルトガル風のポトフのようなコジード・ア・ポルトゥゲーザや、豚肉とあさりのアレンテージョ風は素材の旨味を引き出した味わいが魅力的です。
デザートはライスプディングやカタラーナ、エッグタルトといった卵を使ったデザートが多く、こちらはぜひポルトと合わせて楽しんでみて下さい。
ポルトガル ワイン
おすすめ人気ワイン
ポルト タウニー
・商品番号:32003
・生産者:ピントゥ イ クルス家
(ポルトガル・ドウロ)
・合う料理:食前・食後酒、ドライフルーツケーキ、アーモンドチョコ、半分に切って種子をくり抜きポルトを注いだ「ムロン オゥ ポルト」として。
果実のジャムにコーヒーやシガーの複雑な香り。うっとりとするような十分な甘みと熟成感あるタウニー特有の酸味がバランス良く調和する贅沢な1本です。食前酒や食後酒として、上質なチョコレート、ドライフルーツケーキ、赤いフルーツソースのデザートなどと一緒に味わうのがおすすめです。
ドウロ 赤
・商品番号:32002
・生産者:ピントゥ イ クルス家
(ポルトガル・ドウロ)
・合う料理:地鶏、豚肉、野ウサギ、ハード系チーズ、ローストチキン、タルタルステーキ、チキンのパスティーヤなど
重口の赤ワイン。トゥリガフランセーザ、トゥリガナショナル、ティンタロリスなどの品種を使い、熟した果実の恵みが詰まったような、濃厚でまろやかな味わいが楽しめます。バニラやキャラメルを思わせる後味が印象的。