House Ashar
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ローヌ地方は、フランス南東部に位置し、食の都リヨンの南からローヌ川の河口に向けて広がる地域です。美しい自然にあふれるこの地域は休暇に訪れる人も多い風光明媚な土地の1つです。
高級なものからカジュアルなタイプまで味わい深いワインを生み出す産地です。北部と南部ではワインの特徴も異なり、ファンが多い地域の1つです。
北部では赤ワインはシラー中心、白ワインはヴィオニエが中心で、いずれも樽を効かせたこってりとした味わいが特徴的。一方南部の赤やロゼはグルナッシュノワールが主体、白はグルナッシュブランやクレレット、ブールブランなどが中心で果実味のある味わいが特徴です。
アシャール家のドメーヌがあるのは、ローヌ地方の南北で言うとちょうど真ん中あたりのヴァランスから少し東に入った、ドローム川沿いにあるディという山村。
そこからさらに山の中へずんずんと入って行くとアシャール家の畑に着きます。年間300日晴れていて、雲ひとつ無い青空が広がることが多く、とても自然が多い地方で、工業地帯ではないため公害とは無縁。5kmほどのところには2000メートル級の山もあります。
オーガニック歴:5世代続くワイン農家でずっとオーガニックのみ
アシャール家の畑のある地域は、ぶどう畑の中に、森やくるみの木など、さまざまな作物が一緒にあるのが特徴だそう。このように畑の中に単一の農作物だけでなく、さまざまな作物が混在することは、生態系にとって非常に良い環境なのです。
しかし、アシャールさんの畑の一番すごいところは、5世代続くオーガニックワイン農家だということ。
化学農薬や化学肥料など昔はなかったのですから、戦前はどの農家もオーガニックです。それが戦後、世の中の流れで化学農薬や化学肥料、除草剤などを使用し始める。でもどこかの時点で、その害(ぶどうやワインに対するもの、自然環境や人間に対するものなど)に気がついたり、オーガニックのよさに気がついて、慣行農業からオーガニックへの「転換」をするというのがオーガニックワイン生産者の典型的なパターンの1つです。
ところがアシャール ヴァンサンは「転換」すらしていない、本当に一度も化学物質を撒いたことのない畑を守っているのです。
またアシャール家では、2005年からビオディナミ農法を採用しています(デメター認証も取得)。この農法は人づてに聞き、調べてみてよさそうなのでやり始めたとのこと。その結果、外から入れるものを少なくでき、自分の畑の中で、より循環させてワイン造りができるようになったそうです。
もちろんそれも、豊かな生態系があるからこそ。現在一緒に仕事をしている息子さんも、ビオディナミに傾倒しているそうです。
畑は生態系のバランスがよく保たれていて、品質の高いぶどうを産み出す準備は万端。そこで5世代にわたり蓄積して来たノウハウを持って、ワインづくりを続けているのがアシャールさんです。
・白ぶどう:ミュスカ ブラン ア プチ グラン、クレレット ブランシュ、アリゴテ ブランテ
アシャール家の畑は標高400メートルの丘陵地にあり、3つの飛び地(計11.5ha)になっています。
気候は半分が地中海性、半分が山の気候。標高が高いため、昼と夜の寒暖の差が大きく、ぶどうにはうってつけの環境です(昼夜の寒暖の差は、果実の熟成を促します)。
2005年以来、ビオディナミ農法を採用しその考え方に従った形で土壌の微生物の活性化に取り組んでいます。
・収穫は全量手摘み
アシャールさんは普通のワインはつくらない、「泡職人」。
普通のというのは、スティルワイン(非発泡性の、赤、白、ロゼワインなど)のことで、アシャール家はスパークリングワイン専門の造り手なのです。スパークリングワインは通常のワインに比べて造るのに手間がかかるのですが、生涯それだけに注力しています。まさに泡のことなら何から何まで知り尽くした職人です。
以下に、アシャール家が手がけている3種類のスパークリングワインの醸造の特徴をご紹介します。
クレレット ド ディ ビオ シュール(古代製法)
品種:ミュスカ ブラン ア プチ グラン75%以上、クレレット ブランシュ
発酵方法:発酵は一度きり(タンクにて、若干発酵が始まった時点で温度を下げ、酵母を一部取り除いたあと瓶詰めする。瓶詰め時の糖添加は禁止。4ヶ月以上、瓶内で澱と同居させること。発酵は瓶内で自然にストップ)
アルコール度数…12.5%以下
クレレット ド ディ ブリュット(辛口)
品種:クレレット ブランシュ
発酵方法:瓶内二次発酵のみ(9ヶ月以上、瓶内で澱と同居させること)
アルコール度数…13.5%以下
クレマン ド ディ(シャンパーニュ製法)
品種:クレレット ブランシュ55%以上、ミュスカ ブラン ア プチ グラン5~10%以内、アリゴテ ブラン10%以下
発酵方法:瓶内二次発酵のみ(12ヶ月以上、瓶内で澱と同居させること。また瓶詰めは収穫年の12月1日以降でなくてはならない)
アルコール度数…13.5%以下
将来は、私たちの美しく青い惑星地球を守るために努力しなくてはならないということが人々の意識に根付くでしょう。オーガニック農業は、それができる唯一の農業です。私たちは環境を守るため以外にもちろん、最高のぶどうを得るためにオーガニック農業を行っています。収穫は手摘みで、それによって房を選り分け、悪い部分を取り除くことができます。
私たちにとっては、土壌の生命力がとても大切です。土壌こそが土地の特徴(テロワール)と土地のもつ生命活動を生み出すからです。だから私たちはビオディナミの調合剤(こういう書き方をすると化学的な薬品ぽいのですが、ハーブなどの植物や牛の角や糞、草を煎じたものなど、すべて自然由来のもので、ビオディナミ農法ではそれを水で何百分の1にも希釈して使用するそうです)を使い、土壌が天体のもつエネルギーをきちんと受け止められるようにしています。
ビオディナミというのは、オーガニック農業よりもさらに厳格な決まりがある方法で、例えば天体の動きに従ったり、肥料は自家で作ったり、特殊な調合剤を畑にまくなどしなくてはいけません。普通のオーガニックより手間はかかりますが、2005年からビオディナミを取り入れており、ますますワインの香りがよくなってきています。
かつて人が私に対し、「あなたは完璧主義者だ」と言ったことがあります。
私は、とことん自然なワイン、できれば自然の香りがそのままお客様のグラスに注がれるほど自然に近いものを追求しています。ぶどうの熟し加減がすばらしく、酸味がしっかりあり、収穫時にぶどうが健康で、菌がついていない年は、より完璧に近いワインになります。
若い頃柔道を嗜んだ私にとって、日本は憧れの国であり、日本のみなさんが私たちのワインを楽しんでくださることはこの上ない喜びです。