Magnoni family
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トスカーナ地方は、イタリア中部に位置し、絵画のような丘陵地帯、広がるブドウ畑、オリーブの木々が特徴的です。フィレンツェやシエナなど世界的に有名な中世文化で名だたる歴史を作ってきた都市もあり、文化と自然が融合した地域として知られています。
ワイン産地としては、サンジョヴェーゼ種を主体とした赤ワインが特に有名で、キアンティ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノなどが代表的です。これらのワインは、バランスの取れた酸味と豊かな果実味、そして長い熟成ポテンシャルを持ちます。
トスカーナの中心、フィレンツェの郊外にあるヴィコ・デルサは住人が300人ほどのとても小さく、1200年代初頭にはすでに存在していたといわれる歴史のある村です。
その村の中にある13~14世紀に建てられたというマニョーニ家の邸宅は、屋内の壁に18世紀のフレスコ画のトロンプルイユ(だまし絵)が描かれ、室内には貴重な調度品が並び、1つ1つの部屋がさながら美術館のようです。
マニョーニ家はフィレンツェで金融で栄えた名家です。当主であるピエトロさんは大学で経済学を学び、特に途上国における自給自足経済を専門に研究していました。実際に途上国に赴き現地でのフィールドワークにも取り組みます。
そして化学肥料や農薬など先進工業国だけが利益を上げ、途上国を搾取する現代の農業社会の現実に大きな疑問を抱くようになりました。
庭からはローマ街道(フランチジェーナ街道)や、サンジミニャーノの町の塔が見える自然豊かなこの地で幼少期を過ごしていたピエトロさんは、次第に農業に興味を持つようになりました。6人兄弟のうちでピエトロさん以外は誰一人としてぶどうの栽培やワイン造りには見向きもしませんでした。
1985年にこの邸宅と農地を引継いだ30歳のピエトロさんはぶどう栽培とワイン造りを始め、2000年の9月からオーガニックでのぶどう栽培に取り組んでいったのです。
オーガニック歴:認証は2007年から
オーガニックを実践することで環境を大切にできるという満足があり、また工業的・機械的ではない経験に基づいたアプローチができることにやりがいを感じます。ピエトロさんは、農薬や化学肥料はあくまで「産業」のために必要なものであって、「農業」のためには不必要なものだと考えています。産業にお金を払う必要はない、というのが信条です。
また、本来昔ながらの農法であるオーガニック農業を実践することで、この地で何世紀も前から働いてきた人々との精神の繋がりを感じられること、畑や醸造所で一緒に働く人たちや、ワインを買って飲んでくれる人たちとよりより関係を保てることが、オーガニック農法を実践し、オーガニックでのワイン造りをすることの喜びであり誇りだと考えています。
・白ぶどう:シャルドネ、マルヴァジア ビアンカ
・黒ぶどう:サンジョヴェーゼ、トレッビアーノ、チリエジョーロ、アブリュスチーネ、ドルチェット、フォリアトンダ
マニョーニ家のぶどう畑があるヴィコ・デルサの村は、鮮新世(約500万年~260万年前)には海の下でした。標高160mの薄い砂と泥の層の土壌からなる丘陵地域に位置しており、概ね夏と冬は乾燥し、春と秋は湿気が多くなります。冬の間でも気温が0℃を下回ることはほぼなく、夏の間は35℃を越える温暖な気候です。
畑は川の渓谷に沿って位置し、白と灰色の2種類の粘土質が重なった地質と、赤みがかった黄砂岩の帯からなる多層構造をしています。粘土質の土壌で育ったぶどうはワインに複雑さやしっかりした骨格をもたらし、砂岩の土壌で育ったぶどうは、かろやかさと香りの豊かさをワインに与えます。
広大な200ヘクタールの土地のうちぶどう畑が20ヘクタール、小麦や他の作物の畑が110ヘクタール、オリーブの畑が5ヘクタール、残りの65ヘクタールは森が広がっています。
・グイヨ式の垣根仕立て
・剪定は全て手作業
・同じ畑でも収穫は2回に分け、熟成度の異なるぶどうを収穫するダブルハーベスト
本来のキャンティの味わいを大切にする
ピエトロさんによれば、キャンティは本来は地元で消費される飲みやすいタイプのワインだったそうです。
ところが1980年代のコンペティションで注目され、それ以降世界でも有名になりました。当時は濃いワインが人気だったので、それに合わせてキャンティのスタイルも変わっていきましたが、ピエトロさんが目指すのはシンプルで飲みやすい本来の味わいのキャンティです。シンプルなピエトロさんのキャンティは、カポナータなどの野菜料理とも合う優しさをもっています。
伝統を重んじ、オーガニックを実践して造られた私たちのワインを日本の皆さんに紹介出来てとても嬉しく思います。ぶどうの熟成度を見分け、選別し、それぞれに適したワインを造るよう心掛けていますので、それを感じとって楽しんでいただければ何よりです。